小山主任研究員が「日本ブドウ・ワイン学会2017年大会」において論文賞を受賞しました

平成29年12月4日

小山主任研究員は日本ブドウ・ワイン学会2017年大会(平成29年11月11・12日 出雲市)において、「国産赤ワインブドウのフェノール化合物組成」に関する3つの論文について論文賞を受賞しました。論文賞は、ワイン産業の発展に貢献することが期待される論文に対して授与されるものです。


論文賞受賞式
受賞講演

受賞論文概要

ブドウ果実はワインの品質にとって重要な多様のフェノール化合物を多く含んでいる。中でも、プロアントシアニジン(縮合型タンニン)はワインの渋みやボディ感に寄与する成分であるが、複雑な構造を持ち、品種による組成の違いや、果実における制御機構については不明な点が多かった。

はじめに、プロアントシアニジン生成に対する幼果期の果房周囲の日照条件の影響について検討を行い、日照量の増加によるその組成への正の影響を明らかにした。また、光質による各フェノールの応答性には違いがみられたが、プロアントシアニジン蓄積はUV光ではなく、主に白色光によって影響を受けることを明らかにした。

次に、プロアントシアニジンの光応答に関連する遺伝子を網羅的な遺伝子発現解析法(SuperSAGE法)によりスクリーニングを行い、プロアントシアニジン経路を特異的に制御する新規MYB型転写因子、VvMYBPARを発見した。既に報告のあるプロアントシアニジンの制御因子(VvMYBPA1, VvMYBPA2)とは異なる発現プロファイルを示し、組成制御との関連が示唆された。

更に、国産赤ワインブドウ(東アジア系野生ブドウとその交雑品種欧州系品種、及び欧米雑種)果実におけるフェノール化合物組成を比較した。その結果、これらのグループ間ではアントシアニン組成に加え、プロアントシアニジン組成や含量も顕著に異なること、国内で育種された品種にはミリセチンやレスベラトロールなど機能性成分を高含有するものがあることを明らかにした。

受賞論文

  1. Light quality affects flavonoid biosynthesis in young berries of Cabernet Sauvignon grape

    光質がカベルネソーヴィニヨンブドウ幼果のフラボノイド生合成へ及ぼす影響

    Phytochemistry 78, 54-64 (2012)

  2. Functional characterization of a new grapevine MYB transcription factor and regulation of proanthocyanidin biosynthesis in grapes

    新規MYB型転写因子の機能解明:ブドウ果実におけるプロアントシアニジン生合成の制御

    Journal of Experimental Botany 65(15), 4433-4449 (2014)

  3. Polyphenolic diversity and characterization in the red-purple berries of East Asian wild Vitis species

    東アジア野生ブドウ果実におけるポリフェノールの多様性と特徴

    Phytochemistry 134, 78-86 (2017)