平成3年度 研究成果

研究成果情報について

研究成果

1 Cloning and Nucleotide Sequence of the KHS Killer Gene of Saccharomyces cerevisiae

著者
K. Goto, H. Fukuda, K. Kichise, K. Kitano, and S. Hara
後藤邦康、福田央、吉瀬浩二、北野一好、原昌道
要約

S.cerevisiaeの第V番染色体上にコードされるKHS遺伝子をクローニングしその遺伝子の構造及び発現について検討した。この遺伝子内には2124bpのオープンリーディングフレイムが存在し、そこにコードされるタンパク質の分子量は約79kDaであった。この遺伝子により生成されるキラータンパク質のN-末構造決定より36Gln-37Alaで切断され、分泌されることを示し、予測されるタンパク質の構造から成熟トキシン内に存在する3ヵ所の疎水性領域がK1キラートキシンと同様なイオノフォア的な効果を発揮するものと推察した。

掲載雑誌
Agric.Biol.Chem.,55,1953(1991)

2 醸造用酵母における染色体依存キラー遺伝子及びその相同配列の分布

著者
後藤邦康、星野徹也、西谷尚道
要約

醸造用酵母を中心とした30株の2種の染色体依存キラー性発現及び相同配列の分布について検討した。その結果、清酒酵母及び焼酎酵母ではキラー性発現株の出現頻度がワイン及びビール酵母に比べ低いが、相同配列の存在は認められた。非キラー株においては制限酵素切断パターンが乱れ、KHR遺伝子類似配列の存在しない株も存在した。KHS遺伝子類似配列は供試菌全てに存在したが、相同配列の転写レベルの発現や遺伝子破壊株の生育性について検討を加え、両遺伝子が生存に必須でないことを示した。

掲載雑誌
醸協、86,969(1991)

3 Characterization of Rarobacter faecitabidus Protease I, a Yeast-Lytic Serine Protease Having Mannose-Binding Activity

著者
H. Shimoi, and M. Tadenuma
下飯仁、蓼沼誠
要約

酵母溶解性のセリンプロテアーゼであるRarobacter faecitabidusプロテアーゼIの性質を調べた。N末端アミノ酸配列はトリプシン型のセリンプロテアーゼと相同であった。また、基質特異性は合成基質と酸化インスリンB鎖の両者でエラスターゼのそれと類似していた。プロテアーゼIは酵母菌体に吸着するが、エラスターゼは吸着しない。このことは、エラスターゼが類似する基質特異性を持っているにも関わらず酵母を溶解しない原因と考えられた。プロテアーゼIはマンノースアガロースカラムに吸着し、D-マンノースやD-グルコースによって特異的に溶出された。さらに、本酵素の酵母溶解活性は、これらの糖類によって阻害されたJ.Biochem.,110,608(1991)Iがマンノース結合能を持ったプロテアーゼであることを示している。

掲載雑誌
J.Biochem.,110,608(1991)

4 Construction of a fusion gene comprising the Taka-amylase A promoter and the Escherichia coli β-glucuronidase gene and analysis of its expression in Aspergillus oryzae

著者
S. Tada, K. Gomi, K. Kitamoto, K. Takahashi, G. Tamura, and S. Hara
多田節三、五味勝也、北本勝ひこ、高橋康次郎、田村學造、原昌道
要約

麹菌A.oryzaeのタカアミラーゼA(TAA)遺伝子はデンプン存在下で転写レベルで発現が制御されていることが、ノーザン解析により明らかになった。この発現調節機構を解明するためにTAA遺伝子のプロモーターの下流に大腸菌のβ-グルクロニダーゼ(GUS)の構造遺伝子を連結した融合遺伝子を構築し、A.oryzaeに導入してその発現を調べた。融合遺伝子の導入されたA.oryzae形質転換体はデンプンを炭素源とした場合に強いGUS活性を示したが、グルコースを炭素源とした場合にはほとんど活性がなく、GUS遺伝子がTAAのプロモーターの支配下で発現していることが明らかになった。また、各種の糖を炭素源としてGUS活性の発現を調べた結果、TAAの場合と同様にマルトースより大きなマルトオリゴ糖で活性が強く認められたが、グリセリンでは活性がほとんど認められなかった。

掲載雑誌
Mol.Gen.Genet.,229,301(1991)

5 Identification of the Promoter Region of the Taka-amylase A Gene Required for Starch Induction

著者
S. Tada, K. Gomi, K. Kitamoto, C. Kumagai, G. Tamura, and S. Hara
多田節三、五味勝也、北本勝ひこ、熊谷知栄子、田村學造、原昌道
要約

A.oryzaeのタカアミラーゼA遺伝子のデンプンによる転写誘導に必要なプロモーター領域の同定を試みた。翻訳開始点より-613bpから-10bpまでを含むプロモーター配列と大腸菌β-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子の融合遺伝子を用い、プロモーターの5′側から順次欠失させたデレーションを作成し、A.oryzaeに導入してGUS活性の発現を調ベた。その結果、-377bpまで欠失させてもGUSの発現・誘導は正常に行われるが、-290bpまで欠失すると活性が著しく低下するとともにデンプンによる誘導も認められなくなったことから、-377bpから-290bpの約90bpの領域に転写誘導に必要な配列が存在することが示唆された。

掲載雑誌
Agric.Biol.Chem.,55,1939(1991)

6 Site-directed Mutagenesis of Catalytic Active-site Residues of Taka-amylase A

著者
T. Nagashima, S. Tada, K. Kitamoto, K. Gomi, C. Kumagai, and H. Toda
長島直、多田節三、北本勝ひこ、五味勝也、熊谷知栄子、戸田弘子
要約

タンパク質工学的手法により、麹菌A.oryzaeタカアミラーゼAのアミノ酸残基の機能を解析するために本酵素のcDNAを単離した。推定されている触媒活性部位および基質結合部位のアミノ酸残基を部位特異的変異法により改変した。即ち、Asp206、Glu230、Asp297およびLys209をそれぞれAsnとGlu、GlnとAsp、AsnとGlu及びPheとArgに置換した。改変されたcDNAをADH1プロモーターを持つ酵母発現ベクターに連結し、S.cerevisiaeに導入した。得られたすべての形質転換体が夕カアミラーゼA抗体と交差反応する変異タカアミラーゼを分泌した。活性部位と推定されているAsp206、Glu230、Asp297を改変したものではアミラーゼ活性は検出されなかったが、結合部位とされるLys209を改変したものでは弱い活性が認められた。

掲載雑誌
Biosci.Biotech.Biochem.,56,207(1992)

7 The Glucoamylase cDNA from Aspergillus oryzae: Its Cloning, Nucleotide Sequence、and Expression in Saccharomyces cerevisiae

著者
Y. Hata, K. Kitamoto, K. Gomi, C. Kumagai, G. Tamura, and S. Hara
秦洋二、北本勝ひこ、五味勝也、熊谷知栄子、田村學造、原昌道
要約

麹菌A.oryzaeのグルコアミラーゼをコードするcDNAを、精製酵素の部分アミノ酸配列から推定したDNAプローブを用いてクローニングした。このcDNAを酵母発現ベクターに連結して酵母S.cerevisiaeに導入したところ、活性のあるグルコアミラーゼが培地中に分泌された。塩基配列を決定した結果、2053bpの配列の中に612アミノ酸をコードするオープンリーデイングフレームが見いだされた。他のカビ類のグルコアミラーゼとのホモロジーを検索したところ、アミノ酸レベルでA.nigerと65%、Rhizopus oryzaeと30%であった。しかし、グルコアミラーゼで保存性の高いとされている5つの領域については高いホモロジーが認められた。

掲載雑誌
Agric.Biol.Chem.,55,941(1991)

8 Cloning and nucleotide sequence of the genomic ribonuclease T2 gane (rntB) from Aspergillus oryzae

著者
K. Ozeki, K. Kitamoto, K. Gomi, C. Kumagai G. Tamura, and S. Hara
尾関健二、北本勝ひこ、五味勝也、熊谷知栄子、田村學造、原昌道
要約

麹菌A.oryzaeから合成DNAプローブを用いてリボヌクレアーゼT2遺伝子(rntB)をクローニングし、DNA配列を決定した。rntB遺伝子は5つのエクソンと4つのイントロンからなり、精製酵素で報告されている239アミノ酸をコードする領域の上流に17アミノ酸からなるシグナル配列が認められた。さらに、C-末端には20アミノ酸をコードしていた。カビのRhizopus niveusやタバコのNicotiana alataで報告されているリボヌクレアーゼと比べ、それぞれ51%、47%のホモロジーが認められた。単離したrntB遺伝子をA.oryzaeやA.nidulansに多コピーで導入したところリボヌクレアーゼ活性の上昇が認められた。

掲載雑誌
Curr.Genet.,19,367(1991)

9 Cloning and molecular characterization of the acetamidase-encoding gene (amdS) from Aspergillus oryzae

著者
K. Gomi, K. Kitamoto, and C. Kumagai
五味勝也、北本勝ひこ、熊谷知栄子
要約

麹菌(A.oryzae)遺伝子ライブラリーからアセトアミダーゼをコードする遺伝子(amdS)を、A.nidulansのamdS遺伝子をプローブとしてスクリーニングすることによってクローニングした。塩基配列を決定し、A.nidulansのamdSと比較したところ、A.oryzaeのamdSのコード領域には6個のイントロンが存在し、このうちの3個はA.nidulansのamdSと同じ部位に存在していたが、残りの3個はA.oryzaeのamdSだけに存在していた。また、A.nidulansのアセトアミダーゼと約70%のホモロジーを示す545個のアミノ酸をコードしていた。A.oryzaeのamdSの遺伝子破壊を行うことにより、アセトアミド単一窒素源培地での生育が非常に低下することから、本遺伝子が麹菌においてもアセトアミドの資化に関与していることが明らかになった。

掲載雑誌
Gene,108,91(1991)

10 Nucleotide sequence and expression of the glucoamylase-encoding gene (glaA) from Aspergillus oryzae

著者
Y. Hata, K. Tsuchiya, K. kitamoto, K. Gomi, C. Kumagai, G. Tamura, and S. Hara
秦洋二、土屋幸三、北本勝ひこ、五味勝也、熊谷知栄子、田村學造、原昌道
要約

単離したcDNAをプローブとして、グルコアミラーゼをコードする遺伝子(glaA)をA.oryzaeからクローニングした。glaA遺伝子の塩基配列を調べたところ、45~56bpからなる4つの短いイントロンを持ち、DNAレベルでA.nigerのグルコアミラーゼ遺伝子と62%のホモロジーを示した。イントロンの位置は両者で同一であった。染色体のサザン解析・フィジカルマッピングの結果、3つの遺伝子が存在するα-アミラーゼと異なり、glaA遺伝子は染色体上に1コピー存在していることが明らかとなった。このglaA遺伝子をA.oryzaeに多コピーで導入したところ、形質転換株は3~8倍のグルコアミラーゼ活性を示した。

掲載雑誌
Gene,108,145(1991)

11 Purification and Characterization of an Antibiotic Substance Produced from Rhizopus oligosporus IFO 8631

著者
S. Kobayashi, N. Okazaki, and T. Koseki
小林信也、岡崎直人、小関卓也
要約

Rhizopus oligosprus IFO 8631が培養液中に生成するBacillus subtillis(B.natto)IF0 3335に対する抗菌物質を、主としてHPLCにより単一蛋白質にまで精製した。本物質は分子量約5500の単純蛋白質で、抗菌性に関して耐pH、耐熱性を示し、1ppm以下の低濃度で活性が認められた。アミノ酸組成ではシスチン及びグリシンをそれぞれ約20モル%含み、また、塩基性アミノ酸の含有量が高かった。抗菌スペクトルは比較的狭く、枯草菌以外にいくつかのグラム陽性菌にのみ活性を示した。

掲載雑誌
Biosci.Biotech.Biochim.,56,94(1992)

12 Restriction Fragment Length Polymorphisms of Grapevine DNA with Phenylalanine Ammonia-Lyase cDNA

著者
N. Yamamoto, G. Ono, K. Takashima, and A. Totsuka
山本奈美、小野玄記、高島邦夫、戸塚昭
要約

ブドウの新葉から、容易に制限酵素消化を受けるDNAを抽出する方法を確立した。本法を用いて、ブドウ10品種から全DNAを抽出し、ニンジンのフェニルアラニン・アンモニアリアーゼcDNAをプローブとして用いて、RFLPsの検出を行った。その結果、全サンプルが異なるパターンを示し、これをもとに系統樹を作成したところ、形態的分類と比較的よく一致する結果が得られた。

掲載雑誌
Japan.J.Breed.,41,365(1991)

13 Identification of Monoterpene Alcohol β-Glucosides in Sweet Potatoes and Purification of a Shiro-koji β-Glucosidase

著者
T. Ohta, T. Omori, H. Shimojo, K. Hashimoto, T. Samuta, and T. Ohba
太田剛雄、大森俊郎、下條寛和、橋本憲治、佐無田隆、大場俊輝
要約

甘藷中からlinalyl-β-glucoside(LBG)、α-terpinyl-β-glucoside(TBG)、neryl-β-glucoside(NBG)、geranyl-β-glucoside(GBG)をTMS誘導体として分離、同定した。これらの濃度を定量したところ、LBGの36.9μg/kg甘藷から、TBGの189.7μg/kg甘藷の範囲であった。一方、甘藷焼酎廃液中には75.8μg/l廃液のTBGのみが含まれた。また、焼酎白麹中の主要なβ-グルコシダーゼをp-nitrophenyl-β-glucoside(PNPG)を基質として精製し、性質を調べた。最適pHは5.0、PNPG、GBGに対するKm値はそれぞれ0.72mM、2.4mMであり、グルコースに対するK1値は7.6mM、20%エタノール中で68%の活性があり、甘藷焼酎醪中で活性があることが示唆された。測定したほとんどのβ-グルコシドに対し活性があったが、LBG、TBGに対する活性は著しく弱かった。

掲載雑誌
Agric.Biol.Chem.,55,1811(1991)

14 Transformation from Geraniol、Nerol and Their Glucosides into Linalool and α-Terpineol during Shochu Distillation

著者
T. Ohta, Y. Morimitsu, Y. Sameshima, T. Samuta, and T. Ohba
太田剛雄、盛満裕造、鮫島吉廣、佐無田隆、大場俊輝
要約

モデル焼酎醪中でゲラニオールは主にリナロールに、ネロールはリナロールとα-テルピネオールに変換された。これらの反応は1次反応であった。ゲラニル-β-グルコシドはモデル焼酎醪中で比較的安定であったが、白麹のβ-グルコシダーゼによって容易に加水分解された。ゲラニオール及びネロールのリナロールとα-テルピネオールヘの変換速度定数(k)はpHに依存し、焼酎モデル醪の水素イオン濃度に比例した。K=Kc[H+](kc:触媒定数)とするとき、ゲラニオールからリナロールヘの変換のkcはネロールからリナロールヘの2.16倍であり、ネロールからα-テルピネオールの変換のkcはゲラニオールからα-テルピネオールヘの11.1倍であった。これらの変換の活性化エネルギーをArrhenius plotから算出したところ、84.98-93.30kJ・mol-1であり減圧蒸留では常圧蒸留の約1/100の変換速度であることが示された。ネロールのモデル蒸留試験から、ネロールのリナロール及びα-テルピネオールへの変換と留出が並行して起こっていることが示唆された。

掲載雑誌
J.Ferment.Bioeng.,72,347(1991)

15 白麹のβ-グルコシダーゼ活性と甘藷焼酎香気への寄与

著者
太田剛雄、下條寛和、橋本憲治、近藤洋大、佐無田隆、大場俊輝
要約

甘藷焼酎製造工程中のβ-グルコシダーゼ活性の寄与について検討した。種類の異なる麹の中では黒麹>白麹>黄麹の順にβ-グルコシダーゼ活性が強かった。白麹のβ-グルコシダーゼ活性は製麹の終盤に急激に増加し、クエン酸をよく生成する後半35℃の経過の方が活性が強くなった。β-グルコシダーゼ活性をほとんど醪に持ち込まない酵素剤仕込を行うことにより、甘藷焼酎の特徴の少ないライトタイプの製品が得られた。

掲載雑誌
醸協、86,536(1991)

16 麦焼酎もろみの発酵特性改善に対する白麹の寄与

著者
小笠原博信、高橋克文、飯塚兼仁、伊藤清、石川雄章
要約

白麹菌の生産するキシラナーゼの麦焼酎の発酵特性改善に対する寄与について検討した。大麦を原料として製麹した白麹は米を原料としたものに比べ多量のキシラナーゼを生産したが、これは大麦中のキシランが誘導源となった結果であることがわかった。麦麹から調製した粗酵素及び精製キシラナーゼは大麦の溶解を促進した。また麦麹を用いて大麦焼酎の仕込を行ったところ、キシラナーゼによる溶解補助効果により発酵特性が改善され、発酵歩合も向上した。

掲載雑誌
醸協、86,304(1991)

17 近赤外反射分光分析法による真精米歩合の評価

著者
岡崎直人、福田賢一、木崎康造、小林信也
要約

酒造用原料米の醸造適性評価項目である真精米歩合を近赤外反射分光分析法(NIR)により測定することを検討した。その結果、真精米歩合は水分と高い相関を示し、NIRで選択する評価波長は白米水分の影響の少ない波長を選択する必要があることを認めた。水分の影響のない波長を選択し真精米歩合を精度よく(標準偏差3.17%)、かつ簡便に測定できることが確認された。また、これらの波長は白米中の粗脂肪、粗タンパク質等の成分が関与しているものと推定された。

掲載雑誌
醸協、86,299(1991)

18 酒造原料米中のプロテインボディーの分離・定量

著者
木崎康造、井上康裕、岡崎直人、小林信也
要約

酒造原料米中のタンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分画後、デンシトメーターを用いて定量することを試み、標準タンパク質Carbonic Anhydraseにより0.1~1.0mg/mlの範囲で積分値との間に直線性が認められた。実際の白米においても、プロテインボディー(PB)を構成する含有量の多いタンパク質バンドは精度よく定量できた。精米歩合70%の酒造原料米65品種101点のPB-I及びIIの全タンパク量に占める割合は平均で22.9%と55.6%、また、PB-IとPB-IIの比は約1:2.4であった。原料米中のPBは精米歩合の低下にともなって比例的に減少するが、その比はほとんど変わらなかった。

掲載雑誌
醸協、86,293(1991)

19 Production of Characteristic Odors by Neurospora

著者
H. Yamauchi, T. Obata, T. Amachi, and S. Hara
山内啓正、小幡孝之、天知輝夫、原昌道
要約

Neurosporaに属する供試株12株の内3株が麦芽培地において、果実様香を生産することを見いだし、ガスクロ分析の結果、この香の主成分がカプロン酸エチルと1-octen-3-olであることを示した。さらに、3株の内ATCC46892株が特異的に数十ppmのカプロン酸エチル、N.sitophila IF0 4596株が数 十 ppmの1-octen-3-olのみを生産し、新規に分離したT株が生産量は両株に劣るものの両香気成分を生産することを示した。

掲載雑誌
Agric.Biol.Chem.,55,3115(1991)

20 分子生物学的手法による中国のワイン酵母の菌株識別

著者
戸塚昭、杜連祥、高橋利郎、山本奈美、小野玄記
要約

中国由来のK1タイプのキラー・ワイン酵母3株について、形態、アルコール耐性、至適温度、亜硫酸耐性、キラー性、PFGEパターン、DNAの制限酵素消化パターン、及びSUR1をプローブにしたサザンハイブリダイゼーションパターンにより識別が可能であることを明らかにした。本研究は日中科学技術協定に基づき、天津軽工業学院との国際共同研究として実施した。

掲載雑誌
醸試報、No.163,37(1991)

21 Electrophoretic Karyotypes of Wine Yeasts

著者
N. Yamamoto, N. Yamamoto, H. Amemiya, Y. Yokomori, K. Shimizu, and A. Totsuka
山本奈美、山本信城、雨宮秀仁、横森洋一、清水健一、戸塚昭
要約

ワイン酵母77株の染色体DNAについて、Saccharomyces cerevisiae YNN295を対照として、PFGEにより菌株の識別を試みた。いずれの菌株も対照と類似のパターンを示したが、32株からはYNN295が保持していないバンドが検出された。PFGEのパターンを詳細に検討すると、同一菌株名の菌株間にも差が認められるものがあった。PFGEがワイン酵母の菌株の相違を認識するうえで、有用な手法であることが明らかとなった。

掲載雑誌
Am.J.Enol.Vitic.,42,358(1991)

22 凝集性酵母による芋焼酎蒸留排液の処理

著者
鈴木修、佐藤俊一、家藤治幸、下飯仁、蓼沼誠、吉沢淑
要約

芋焼酎蒸留排液は高濃度の汚濁物質を含む上、粘性が高く高度処理が困難である。これにHansenula anomala J-224の菌体を添加することによって凝集効果による濾過性の改善を検討した。J-224菌体による処理条件としてはpH4-5、温度25℃でJ-224菌体を1x109cells/ml添加して60分程度の放置した後、フィルタープレス式脱水機による脱水試験を行ったところ、処理後の排液の濾過速度が約2倍(1.8Kg/m2hr)に上昇した。さらに綿花系の助剤を添加した場合は約3倍に濾過速度が上昇した。このような濾過性改善作用はJ-224が有する特異的な凝集性と、この凝集に強く関与しているタンパク質によるものと推察された。

掲載雑誌
醸協、86,137(1991)

23 平成元酒造年度米粉液化糖化液4段の実地醸造試験結果

著者
木崎康造、松永正秀、岡崎直人、小林信也、原昌道
要約

平成元酒造年度に全国の43清酒製造場において米粉液化糖化4段の試験醸造を行った。米粉4段清酒は、対照の白米4段清酒と比べ鉄分がやや多いものの、その他の一般成分に差はなく、新酒時での官能審査にも差がなかった。貯蔵後(30℃約2カ月)の酒質は品質の劣化がやや早い傾向にあったが、官能評価では有意な差は認められなかった。

掲載雑誌
醸協、86,223(1991)

24 温度感受性自己消化酵母の取得とその利用

著者
北村秀文、佐藤俊一、下飯仁、家藤治幸、佐伯宏、蓼沼誠
要約

酒粕の新規利用法を開発する一方法として37℃で自己消化を起こす温度感受性突然変異株(k-ts8)を造成し酒粕の短期熟成を検討した。k-ts8はYPD培地で37℃で培養すると培地中に菌体内酵素であるアルカリフォスファターゼを漏出し生菌数の減少が起こった。さらに、菌体内において、プロテアーゼの活性が上昇し、また培養液中のアミノ酸度が増加した。酒粕中においても同様にアルカリフォスファターゼ活性の増加が見られ、酵母由来の成分であるS-アデノシルメチオニンの増加から見ると、かなり短時間でk-ts8の自己消化が起こると考えられた。

掲載雑誌
醸協、86,605(1991)

25 第29回洋酒・果実酒鑑評会出品酒の分析値

著者
戸塚昭、大場俊輝、高橋利郎、佐無田隆、山本奈美、大田剛雄、小野玄記、原昌道
要約

第29回洋酒・果実酒鑑評会出品酒315点について鑑評結果を述べるとともに、果実酒類、ウイスキー類及び梅酒について分析値を示した。

掲載雑誌
醸試報、No.163,9(1991)

26 プロファイル法によるブランデーの官能評価

著者
戸塚昭、高橋利郎、吉沢淑、大場俊輝、高橋康次郎、青柳尚徳、荻野一郎、佐藤茂生、篠原隆、西村驥一、和田春夫
要約

洋酒・果実酒鑑評会において、官能評価法としてプロファイル法を導入するために、評価項目、評価用語、審査結果の表示方法を検討した。本法を採用することによって、個々のブランデーの特性を容易に把握することが可能となった。

掲載雑誌
醸試報、No.163,41(1991)

27 清酒醪中のS-アデノシルメチオニンの定量と変化

著者
後藤邦康、土肥和夫
要約

主に清酒酵母がつくるS-アデノシルメチオニン(SAM)の清酒醪及び酵母菌体内の定量を高速液体クロマトグラフィーにより行った。SAMは醪初期から酵母内に蓄積されるが、醪中には検出されず、醪後期に醪中のSAM量が上昇すること、更に、醪中のSAM濃度は酵母の死滅率との間に強い相関があることを示した。また、醪末期でも死滅しにくいアルコール耐性株を用い、SAMの挙動を見たところ菌体内の蓄積は起こるが、末期の醪中のSAM量が増加しないことから、相関の原因が酵母の死滅に伴う菌体内SAMが醪中への漏出により起こることを示した。

掲載雑誌
醸協、87,230(1992)

28 平成2酒造年度全国新酒鑑評会出品酒の分析について

著者
石川雄章、伊藤清、須藤茂俊、原昌道
要約

全国新酒鑑評会の出品酒877点について、使用酵母の酒類、もろみ日数及び成分値等について調査を行った。また品質については順位法(5点法)による総合評価の審査に加えて、プロファイル法による官能審査を行った。さらにこれらの結果に基づき、全出品酒の傾向及び上位酒の出品傾向等について考察した。

掲載雑誌
醸試報、No.163,1(1991)

29 第14回本格焼酎鑑評会出品酒の成分と評価

著者
大場俊輝、佐無田隆、太田剛雄、原昌道
要約

平成2年6月1日に行われた本格焼酎鑑評会の出品酒313点について、使用原料ごとに普通蒸留、減圧蒸留および特殊製品に区分し、官能評価を行うとともに成分の分析を行った。官能審査は、マークシート用紙を用いたプロファイル法で実施した。酒質の評価からみると、各出品区分の総合評価は、平均値が2.5~2.7の間にあり、市販酒としてはほぼ満足できる成績であった。

掲載雑誌
醸試報、No.163,27(1991)