平成9年度 研究成果

研究成果情報について

研究成果

1 Transformation System for Aspergillus oryzae with Double Auxotrophic Mutations,niaD and sC

著者
O. Yamada, B. R. Lee, and K. Gomi
山田修、李秉魯、五味勝也
要約

Aspergillus nidulansのATP sulfurylaseをコードするsC遺伝子を選択マーカーとするAspergillus oryzae形質転換系を開発した。宿主はnitrate reductase (niaD)を欠失したA. oryzae株からセレン酸耐性によりポジティブセレクションで選択した。 A. oryzae niaD遺伝子をマーカーとした形質転換では相同的組換えにより主としてシングルコピーのプラスミドが染色体へ導入されるのに対して、A. nidulans sC遺伝子をマーカーとした場合はランダムな多コピーの染色体への導入が見られたことから、この形質転換系では、マーカーの選択により相同的に1コピーあるいはランダムに多コピーの遺伝子の導入が可能である。

掲載雑誌
Biosci. Biotech. Biochem.,61,1367(1997)

2 Green odorants of grape cluster stem and their ability to cause a wine stemmy flavor

著者
K. Hashizume, and T. Samuta
橋爪克己、佐無田隆
要約

ワイン用ブドウ(Vitis vinifera )の栽培品種カベルネ・ソービニヨン及びシャルドネの果梗破砕抽出物中の官能的に有力な青い香気成分として5つの脂肪族カルボニル化合物及び2つのメトキシピラジン化合物(MP)をGCにおい嗅ぎ法によって同定した。同定した化合物及び関連化合物のうち、果梗中のMP量は果実又は葉中よりも高かったが、果梗中の脂肪族化合物量は他の部分より必ずしも高くはなかった。ワイン醸造工程に破砕した果梗を添加することによりワイン中の当該MP量は増加したが、破砕した果梗中の官能的に有力な5つの脂肪族カルボニル化合物は生成したワイン中には検出されなかった。

掲載雑誌
J. Agric. Food Chem., 45, 1333 (1997)

3 甲州三尺×Riesling交配品種のDNA解析

著者
後藤(山本)奈美
要約

甲州三尺、Riesling、及びその交配品種であるRiesling LionとRiesling ForteのrDNAの介在配列のRFLP解析、及び10merのプライマー3種類を用いたRAPD解析を行ったところ、いずれの場合も両交配品種のバンドは親品種の少なくとも一方のバンドと一致する事が確認された。

掲載雑誌
J. ASEV Jpn., 8, 1 (1977)

4 Identification and analysis of a static culture-specific cell wall protein,Tir1p/Srp1p in Saccharomyces cerevisiae.

著者
H. Kitagaki, H. Shimoi, and K. Itoh
北垣浩志、下飯仁、伊藤清
要約

Saccharomyces cerevisiaeの静置培養菌体から分子量10万の主要な細胞壁タンパク質を分離した。このタンパク質は、振盪培養した菌体には含まれていなかった。精製したタンパク質のアミノ酸配列を解析した結果、このタンパク質はTir1p/Srp1pであることがわかった。TIR1/SRP1は、ブドウ糖の存在、低温ショック、嫌気培養などで発現が誘導されることが知られていたが、その遺伝子産物は細胞膜タンパク質であると考えられており、細胞壁タンパク質であることは知られていなかった。我々は、Tir1p/Srp1pが細胞壁のβ-1,3-glucanase処理で遊離してくること、そしてそのタンパク質が抗β-1,6-glucan抗体と反応し、ブドウ糖を含んでいることを明らかにした。これらの結果は、Tir1p/Srp1pが静置培養菌体の主要な細胞壁構造タンパク質であり、β-1,6-glucanを介して細胞壁に結合していることを示している。TIR1/SRP1のmRNAは静置培養で特異的に発現し、その転写はROX1リプレッサーによって制御されていた。

掲載雑誌
Eur. J. Biochem., 249, 343 (1997)

5 Transformation system for wastewater treatment yeast, Hansenula fabianii J640: isolation of the orotidine-5'-phosphate decarboxylase gene (URA3) and uracil auxotrophic mutants

著者
M. Kato, H. Iefuji, K. Miyake, and Y. Iimura
加藤美好、家藤治幸、三宅幸児、飯村穣
要約

遺伝子組換え技術による新規排水処理用酵母の育種を目的に、まず排水処理用実用排水処理用酵母Hansenula fabianii J640の宿主ベクター系を構築した。宿主として、5-fluoroorotic acidを使ったポジティブ選択により得たorotidin-5'-phosphate (OMP) decarboxylase (URA3) 遺伝子領域の変異であるウラシル要求株 H. fabianii J640 u-1を取得した。一方 E. coli のpyr F 変異株の相補によりH. fabianii J640のOMPをコードする795bpを含むプラスミッドpHFura3を取得した。このpHFura3は H. fabianii J640 u-1株を宿主染色体DNAの中に非相同的かつ多コピーの組込みにより形質転換することが可能であった。

掲載雑誌
Appl. Microbiol. Biotechnol, 48, 621 (1997)

6 無蒸煮白糠を用いた酒類の製造について

著者
岩田博、長野哲也、塩川和広、鈴木昭紀
要約

従来から清酒製造における副産物である米糠の利用が望まれているが、特に最近の清酒の高品質化傾向にともなって発生する白糠が多くなっていることから、その有効利用が強く求められている。そこで従来から検討されてきた利用方法に変わる無蒸煮白糠を用いた新規な酒類の製造方法について検討した。

95%から65%精米で発生するそれぞれの区分の糠を用いて、それに酵母と水を加え、小仕込みを行った。

その結果、いずれの区分の糠も発酵し、65%区分の白糠では最高アルコール分9.8%の糠酒が得られた。また、糠は精米段階でα化されていることがわかった。さらに生の糠には麹の1/7から1/75程度の糖生成力があり、生成する糖はグルコースがマルトースより多かった。なお、この糖生成能力は精白度の低い糠の方が強いこともわかった。

掲載雑誌
醸協, 93,139(1998)

7 A New Sampling Means for On-Line Analysis of Brewing Mash

著者
K. Sato, T. Hirahara, M. Tadenuma, and T. Nishiya
佐藤和夫、平原敏幸、蓼沼誠、西谷尚道
要約

発酵途中の醸造醪を分析するために、回転型フィルターにより連続サンプリングを行う方法を開発した。この方法では回転によるせん断応力によりフィルター表面にケークが付着することを防止でき、従って、ろ過抵抗の大きい発酵醪からのサンプリングろ過に適していると思われた。清酒醪に応用した結果では、無回転時の約10倍のろ過フラックスが得られ、かつ全発酵期間中において、無洗浄の状態で安定した連続ろ過サンプリングを行うことができ、アルコールやろ液の比重の連続分析が可能であった。醤油醪や焼酎醪などにおいても同様の結果が得られたことから、各種の発酵醪の自動分析に利用できると思われた。

掲載雑誌
J. Ferment. Bioeng., 85,339(1998)

8 貴醸酒の熟成における成分変化

著者
木崎康造、福田央、高橋康次郎
要約

清酒醸造の留仕込の汲み水の1部に清酒を用いた貴醸酒の2年から14.5年貯蔵の試料を入手し分析した。着色度、紫外部(280nm)吸収、酸度及びアミノ酸度は貯蔵期間と共に増加し、pHが低下する傾向がみられた。有機酸では、乳酸の増加が著しく貯蔵中に全有機酸の約50%を占めるまでとなった。増加乳酸の多くは、L-乳酸であった。クエン酸及びリンゴ酸は減少し、酢酸、フマール酸及びピログルタミン酸が増加し、ピルビン酸及びコハク酸の変化は少なかった。

アミノ酸は、増加を示すものが多い中で、Trpは不検出、Gluは減少し、Cys, Met, Lys, His、Argには大きな変化がみられなかった。貯蔵中にアミノ酸が増加する理由として、貴醸酒が未分解のタンパク質やペプチドを多く含むことが原因と推定された。酸度の増加は貯蔵中の乳酸菌の作用と考えられたが、貯蔵酒は甘酸の調和した重厚な熟成酒で、乳酸菌が品質向上に寄与した事例と考えられた。

掲載雑誌
醸協, 93,148(1998)

9 平成7酒造年度全国新酒鑑評会出品酒の分析について

著者
高橋康次郎、木崎康造、家藤冶幸、福田央、小林信也
要約

平成7酒造年度全国新酒鑑評会出品酒879点についての分析結果及び調査結果について考察した。

掲載雑誌
醸研報, No169,1(1997)

10 第19回本格焼酎鑑評会について

著者
岩野君夫、三上重明、後藤奈美、倉光潤一、小林信也
要約

第19回本格焼酎鑑評会出品酒244点について官能審査及び成分分析の結果を述べるとともに酒質の傾向を考察した。

掲載雑誌
醸研報, No169, 27 (1997)

11 第34回洋酒・果実酒鑑評会出品酒の分析値

著者
佐無田隆、橋爪克己、荒巻功、伊藤伸一、小林信也
要約

第34回洋酒・果実酒鑑評会出品酒291点について鑑評結果を述べるとともに、果実酒類、ウイスキー類及びブランディーについて分析値を示した。

掲載雑誌
醸研報, No169, 13 (1997)