平成12年度 研究成果

1. 研究成果情報について

(1) 研究成果

1 Comparison of UDP-Glucose: flavonoid 3-O-glucosylransferase (UFGT) gene sequences between white grapes (Vitis vinifera) and their sports with red skin

著者
S. Kobayashi, M. Ishimaru, C. K. Ding, H. Yakushiji, and N. Goto
小林省蔵、石丸恵、C K Ding、薬師寺博、後藤奈美
要約

UFGTの発現がブドウ果皮の着色に決定的な働きをすることが示されている。白品種の赤色芽条変異株の果皮では、親株の白品種より、アントシアニン合成系の7つの構造遺伝子が同調的に高く発現していた。特にUFGTは赤色芽条変異株及び巨峰のみから発現が検出された。しかし、白品種と赤色芽条変異株のUFGTにはコード領域、プロモーター領域ともに差異が認められなかった。従って、白から赤への変異は、UFGTの発現をコントロールする制御遺伝子の変異によるものと考えられた。

掲載雑誌
Plant Sci., 160, 543 (2001)

2 Tolerance mechanism of the ethanol-tolerant mutant of sake yeast

著者
Y. Ogawa, A. Nitta, H. Uchiyama, T. Imamura, H. Shimoi, and K. Ito
小川義明、新田朝子、内山博文、今村武司、下飯仁、伊藤清
要約

これまでに、清酒酵母を親株とした種々のエタノール耐性変異株が分離されており、実際に清酒醸造に利用されている。しかし、これらのエタノール耐性変異株の詳しい耐性獲得機構については不明であった。我々は、S.cerevisiaeの全ての遺伝子がスポットされたDNAマイクロアレイを用いて、エタノール耐性変異株とその親株との遺伝子発現を比較することにより、エタノール耐性変異株のエタノール耐性獲得機構の解析を行なった。両者の対数増殖期の細胞の遺伝子発現を比較したところ、エタノール耐性変異株では、エタノールや熱、高浸透圧などのストレス存在時に発現する遺伝子群が高発現していることがわかった。これらの遺伝子の高発現に伴い、エタノール耐性変異株では、ストレス条件下において細胞を保護するのに役立っていると思われる、グリセロールやトレハロース、カタラーゼなどの物質やタンパク質が高生産されていた。これらの結果から、エタノール耐性変異株では、ストレスで誘導される遺伝子群が常に高発現していることにより、エタノールを始めとするさまざまなストレスに耐性を示すと考えられた。

掲載雑誌
J. Biosci. Bioeng., 90, 313 (2000)

3 Production, purification and characterization of an extracellular lipase from the yeast, Cryptococcus sp. S-2

著者
N. R. Kamini, T. Fujii, T. Kurosu, and H. Iefuji
Numbi. Ramudu. Kamini、藤井力、黒須猛行、家藤治幸
要約

Cryptococcus sp. S-2が菌体外に生産するリパーゼを精製し、その性質を調べた。種々の窒素源、炭素源、誘導物質その他生産条件を検討した結果、120hr、25℃、pH5.6で 、最大65.7 U/ mlのリパーゼ生産が見られた。そのリパーゼをSP-5PW、ゲルろ過カラムにより精製した。分子量はSDS-PAGE上で22kDa、至適酵素活性pH 7.0、至適温度37℃。酵素はpH5.0~9.0の範囲、50℃まで安定であった。0~10%量のDMSO、ジエチルエーテル添加は酵素活性を促進し、一方、ベンゼンは阻害的に働いた。本リパーゼは種々の有機溶媒50%、60min中で安定であり、有機溶媒に耐性の強い酵素であった。

掲載雑誌
Process Biochemistry, 36, 317 (2000)

4 グルコースオキシダーゼによる発酵抑制について

著者
岩野君夫、三上重明、尾崎博己、天野仁
要約

Aspergillus ficuum 起源のフィターゼ剤添加仕込みによる清酒醪の発酵抑制現象の原因を明らかにするため、酵素剤中の酵母増殖阻害物質を精製したところ、精製タンパク質のN末端アミノ酸配列はA. niger のグルコースオキシダーゼと高いホモロジーが見いだされた。精製タンパク質及びA. niger のグルコースオキシダーゼを用いた小仕込試験の結果から、グルコースオキシダーゼの酵素反応により生成される過酸化水素が酵母の増殖を阻害するものと推定した。

掲載雑誌
醸協, 95, 607 (2000)

5 低温発酵における酸性ホスファターゼ及びリパーゼ剤添加の効果

著者
岩野君夫、三上重明、磯谷敦子、天野仁、佐藤深雪
要約

吟醸酒等の高級清酒製造における原料の有効利用の観点から低温発酵における蒸米溶解率の向上を図るため、種々の市販酵素剤の添加効果を調べた。その結果、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、酸性プロテアーゼの他に酸性ホスファターゼ及びリパーゼ剤を配合した酵素剤を用いた低温発酵による製成酒は、粕歩合が低いにもかかわらず吟醸麹によるものと同等の官能評価が得られた。

掲載雑誌
醸協, 95, 672 (2000)

6 清酒もろみ製造工程におけるリパーゼの効果

著者
木崎康造、粂田浩史、佐藤深雪、山根雄一、金尾丞泰、福田央、三上重明、若林三郎
要約

リパーゼが清酒もろみにおける香気成分の消長に及ぼす影響について検討した。その結果、市販リパーゼ剤の添加により、製成酒の酢酸イソアミル含量が低下し、カプロン酸エチルが増加する傾向が見られた。さらに、精製リパーゼを用いて検討したところ、in vitro では酢酸イソアミル及びカプロン酸エチルは分解されるが、清酒もろみ環境下でのみカプロン酸エチルが増加した。

掲載雑誌
生物工学, 78, 377 (2000)

7 Isolation and characterization of phytase isozymes produced by Aspergillus oryzae

著者
J. Fujita, N. Budda, M. Tujimoto, Y. Yamane, H. Fukuda, S. Mikami, and Y. Kizaki
藤田仁、Nisa Budda、辻本誠、山根雄一、福田仁、三上重明、木崎康造
要約

紫外線照射によりフィターゼ高生産麹菌(KL-38)を育種した。KL-38株はフィターゼ生産が親株より2.7倍に向上していた。フィターゼをHPLCにて分離したところPhyIとPhyIIの2つに分離した。KL-38株は、固体培養で生産が向上するPhyIIの活性が親株に比較して上昇していた。

掲載雑誌
Biotechnol. Lett., 22, 797 (2000)

8 On-Line Measurement of Intracellular ATP of Saccharomyces cerevisiae and Pyruvate During Sake Mashing

著者
K. Sato, Y. Yoshida, T. Hirahara, and T. Ohba
佐藤和夫、吉田行成、平原俊幸、大場俊輝
要約

飢餓培養中のS. cerevisiaeの細胞内ATP濃度と培養液中のピルビン酸濃度はグルコースのパルス添加により即座に増加した。これらは培地にアルコール添加を行うと速やかに減少したが、同時にアセトアルデヒドの増加と酵母の死滅率の増加が観察された。これらの反応は清酒もろみ中においてオンライン測定により確認され、酵母細胞内のATPとピルビン酸は清酒もろみにおける酵母の生理状態評価の有効な指標になると考えられた。一方、清酒もろみの発酵試験結果において、細胞内ATPとピルビン酸生成量は温度とともに上昇した。連続培養試験ではピルビン酸生成速度は温度により大きな影響を受けなかったことから、ピルビン酸生産の違いは酵母の増殖速度もしくはアルコール生産速度の影響とみられる。従って清酒もろみでは仕込み初期の酵母の増殖段階における温度操作がピルビン酸の制御に重要と考えられた。

掲載雑誌
J. Biosci. Bioeng., 90, 294 (2000)

9 無蒸煮白糠を清酒醸造の掛米の代替とする仕込について

著者
岩田博、岩瀬新吾、松浦宏行、鈴木利明、荒巻功
要約

精米時に副生する白糠を有効利用する目的で、清酒醸造の添、仲、留の掛米の代わりに無蒸煮の白糠を用いる仕込を検討した。その結果、(1)白糠使用区分の醪は発酵が旺盛で、アルコール分は対照より高く、白糠は無蒸煮でもよく溶解・発酵する。(2)留に白糠を使用した製成酒は、添に使用したものより酸度、酢酸の値が低い。(3)製成酒は、アミノ酸度や高級アルコールの値が対照より高い。また、白糠の使用比率に従って酒の鉄の値が増加し着色度も高くなる。(4)官能試験の結果、酸臭の指摘は仕込初期に白糠を使用した区分に多く、糠臭の指摘は白糠使用比率の高い区分に多い傾向がある等が分かり、清酒醸造に無蒸煮の白糠を使用する場合には、総米の10%程度を留の時点に添加するのが良いと推定された。

掲載雑誌
醸協, 96, 63 (2001)

10 Cloning and sequencing of the triacylglycerol lipase gene of A. oryzae and its expression in E. coli

著者
J. Toida, M. Fukuzawa, G. Kobayashi, K. Ito, and J. Sekiguch
戸井田仁一、福澤幹雄、小林豪太、伊藤清、関口順一
要約

A. oryzae由来のトリアシルグリセロールリパーゼ(L3)をコードする遺伝子(tglA)のクローニングとシークエンシングを行った。本遺伝子は3つのイントロンを含む954bpのORFからなり、254個のアミノ酸からなるタンパク質をコードしており、そのうち30個のアミノ酸はシグナル配列であることが確認された。本遺伝子の推定アミノ酸配列中には、リパーゼやクチナーゼ等の脂質関連酵素に共通するモチーフが確認された。本遺伝子は糸状菌由来のクチナーゼと最も相同性が高かったが、酵素の基質特異性の点ではクチナーゼと異なっており、リパーゼに属すると考えられた。本遺伝子は、染色体上に1コピー存在した。

掲載雑誌
FEMS Microbiology Letters, 189, 159-164 (2000)

11 Extracellular Soluble Polysaccharide (ESP) from Aspergillus kawachii Improves the Stability of Extracellularβ-glucosidases (EX-1 and EX-2) and Is Involved in Their Localization.

著者
K. Iwashita, H. Shimoi, and K. Ito
岩下和裕、飯下仁、伊藤清
要約

白麹菌(Aspergillus kawachii)は、菌体外に2種類の遊離型β-グルコシダーゼ(EX-1、EX-2)、細胞壁中に1種類の結合型β-グルコシダーゼ(CB-1)を生産し、これらの酵素はすべて同一の遺伝子bglAによってコードされている。遊離型のβ-グルコシダーゼは粗酵素中では非常に安定であるにもかかわらず、精製を行うと非常に不安定となる。また、精製された遊離型のβ-グルコシダーゼは、細胞壁に吸着する活性を持っているにもかかわらず、実際の培地中固体培養)では、細胞壁から離れ培地中に遊離の状態で存在する。我々は、白麹菌が固体培養条件下で生産する可溶性多糖(ESP)を精製し検討を行った。その結果、精製したESPを添加することにより、精製酵素のpH安定性、熱安定性ともに改善され、pH 3.0-7.0、50℃以下で安定となった。さらに、ESPはこれらの精製酵素と相互作用し、酵素の細胞壁への吸着を阻害するとともに、細胞壁に吸着した酵素を可溶化した。また、ESPの添加は酵素のKm値には変化を与えなかった。以上のことから、ESPが遊離型β-グルコシダーゼの安定性と局在性に関与していることが示唆された。ESPは酵素と直接相互作用することで、酵素を細胞壁から遊離の状態に保ち、さらに安定化しているものと考えられた。

掲載雑誌
J. Biosci. Bioeng., 91, 134 (2001)

12 セルレニン耐性による酢酸低生産性清酒酵母の分離

著者
後藤(山本)奈美、劉宏芳、石川雄章、岡崎直人
要約

協会7号酵母のセルレニン耐性株80株のうち14株が液体培養で、さらに4株が清酒の小仕込み試験で酢酸低生産性を示し、1株はパイロットスケールの清酒醸造においても低い酢酸生産性を確認した。これら4株は、0.5Mソルビトールを添加して高浸透圧とした液体培地では、親株と同様、対照の2%グルコース培地よりも酢酸生成が促進されたが、11%グルコース培地では親株よりも低い酢酸生成を示した。しかし、これら4株は多剤耐性またはFAS2変異によると考えられるカプロン酸エチル高生産性を示し、セルレニン耐性と酢酸低生産性がリンクしているかどうかは、今後検討を要する。

掲載雑誌
醸協, 95, 533 (2000)

13 Transport of Pyruvate in Saccharomyces cerevisiae and Cloning of the Gene Encoded Pyruvate Permease

著者
O. Akita, C. Nishimori, T. Shimamoto, T. Fujii, and H. Iefuji
秋田修、西森千晴、島本稔大、藤井力、家藤治幸
要約

酵母におけるピルビン酸の透過機構を解析した。0℃やエネルギー産生共役阻害剤の存在下では取込みが見られないことからエネルギー依存型の透過系が存在すること、乳酸による競合阻害を受けその阻害定数は3mMであることを明らかにした。透過系はpH 6で最大活性を示しその時のKm値は4.1mMであった。

実験室酵母を親株とし、ピルビン酸アナログであるフルオロピルビン酸に対する耐性変異株を分離し、さらに耐性変異株からピルビン酸透過活性欠損変異株を分離した。ピルビン酸透過活性欠損変異を相補する遺伝子として、乳酸の透過系に関与する遺伝子として報告されていたJEN1を単離した。ピルビン酸透過活性欠損変異株へのJEN1遺伝子の導入による透過活性の回復、及び親株のJEN1遺伝子破壊によるピルビン酸透過活性の消失が確認された。以上のことから酵母ではJEN1 遺伝子がピルビン酸取込みに関する重要な遺伝子であると考えられる。

掲載雑誌
Biosci. Biotechnol. Biochem., 64, 980 (2000)

14 Molecular breeding of yeast with higher metal-adsorption capacity by expression of histidine-repeat insertion in the protein anchored to the cell wall

著者
H. Kambe-Honjoh, K. Ohsumi, H. Shimoi, H. Nakajima, and K. Kitamoto
本條秀子、大隈恵介、下飯仁、中島春紫、北本勝ひこ
要約

ヒスチジン6個の繰り返し配列と酵母Saccharomyces cerevisiaeのGPIアンカータンパク質Cwp1、Aspergillus oryzaeのタカアミラーゼとの融合タンパク質が合成され、酵母の細胞表層上で発現された。発現した融合タンパク質は、細胞壁に局在しており、デンプン分解活性を保持していた。この融合タンパク質を保持する菌株は、タカアミラーゼとCwp1との融合タンパク質を発現する酵母形質転換体と比較すると、1.6から2.8倍高い銅、ニッケル、亜鉛イオンに対する吸着能を持っていた。

掲載雑誌
J. Gen. Appl. Microbiol., 46, 113 (2000)

15 Molecular cloning and application of a gene complementing pantothenic acid auxotrophy of sake yeast Kyokai No. 7

著者
H. Shimoi, M. Okuda, and K. Ito
下飯仁、奥田将生、伊藤清
要約

清酒酵母協会7号は35℃でパントテン酸要求性を示し、この性質は他の酵母との識別のために使用されている。我々は、協会7号のパントテン酸要求性を相補する遺伝子をSaccharomyces cerevisiaeの実験室株からクローニングした。DNA塩基配列の解析の結果、クローニングされた遺伝子はECM31であることがわかった。ECM31の遺伝子産物は、Escherichia coli においてパントテン酸合成に関与しているketopantoate hydroxymethyltransferaseと類似していた。実験室酵母のECM31遺伝子破壊株はパントテン酸要求性となった。このことは、ECM31も酵母のパントテン酸合成に関与していることを示している。協会7号の一倍体株とECM31遺伝子破壊株とのかけ合わせ株は35℃でパントテン酸要求性を示した。これは、協会7号がECM31の温度感受性を示すアレルを持つことを示唆している。ECM31は協会7号とそれに由来する株の形質転換における選択マーカーとして使用可能である。

掲載雑誌
J. Biosci. Bioeng., 90, 643 (2000)

16 平成10酒造年度全国新酒鑑評会出品酒の分析について

著者
岡崎直人、三上重明、後藤奈美、江村隆幸、石川雄章
要約

平成10酒造年度全国新酒鑑評会出品酒878点の成分分析、調査及び官能審査結果について考察した。

掲載雑誌
醸研報, No172, 1 (2000)

17 Effect of Aldehyde Dehydrogenase and Acetyl-CoA Synthetase on Acetate Formation in Sake Mash

著者
S. Akamatsu, H. Kamiya, N. Yamashita, T. Motoyoshi, N. Goto-Yamamoto, T. Ishikawa, N. Okazaki, and A. Nishimura
赤松誠司、神谷久弥、山下伸雄、元吉徹、後藤(山本)奈美、石川雄章、岡崎直人、西村顕
要約

清酒酵母による酢酸の生成機作を明らかにする目的で、酢酸の生成に関与するアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALD)、アセチル-CoAシンセターゼ(ACS)、及びアセチル-CoAハイドロラーゼ(ACH)の発現を検討した。清酒醪から分離した酵母を用いたノーザン解析の結果、供試したACS1, ACS2, ALD2/3, ALD4, ALD6及びACH1は、清酒発酵中に転写されていることが示された。ALD2/3の転写は清酒発酵の初期のみから検出された。1Mソルビトール又は20%グルコースを含む高浸透圧培地を用いた静置培養では、高濃度の酢酸が生成され、ALD2/3の転写が高くなった。これは、発酵中にグルコース濃度が高くなると酢酸濃度が高くなる原因の1つと考えられた。ACS2を高発現させると、清酒の小仕込み試験、静置培養試験ともに酢酸生成が低下した。一方、ACS1の高発現は静置培養での酢酸生成に有意な変化を及ぼさなかった。これらの結果から、ALD2/3とACS2が清酒醸造中の酢酸生成に重要な働きをしていることが示された。

掲載雑誌
J. Biosci. Bioeng., 90, 555 (2000)

18 第22回本格焼酎鑑評会について

著者
木崎康造、福田央、小濱元、石川雄章
要約

第22回本格焼酎鑑評会出品酒247点について官能審査及び成分分析を行うとともに酒質の傾向を考察した。

掲載雑誌
醸研報, No172, 29 (2000)

19 第37回洋酒・果実酒鑑評会出品酒の分析値

著者
荒巻功、橋爪克己、岩田博、岡崎直人
要約

第37回洋酒・果実酒鑑評会出品酒359点について鑑評結果を報告するとともに、果実酒類及びウイスキー類について分析値を示した。

掲載雑誌
醸研報, No172, 13 (2000)

20 酸性ウレアーゼによる尿素分解速度の欧州産と米国産ワインにおける比較及びワイン成分との関係

著者
児玉成一、伊藤清
要約

酸性ウレアーゼによるワイン中の尿素分解速度を測定したところ、白及びロゼワインにおいては、欧州産ワインにおける平均値の方が米国産ワインのそれよりも6~9倍大きく、米国産ワインは欧州産ワインに比べて、尿素が分解されにくいことがわかった。赤ワインにおいても同様の傾向があったが、白及びロゼワインほどの大きな差は見られなかった。フッ素含量と尿素の分解速度の間には有意な負の相関があり、かつ米国産ワインと欧州産ワイン間にはフッ素含量に有意な差が認められたので、米国産ワインの尿素分解速度が低いのは、フッ素含量が原因であると考えられた。リンゴ酸と尿素分解速度の間には負の、L-乳酸含量との間には正の相関が認められた。

掲載雑誌
醸協, 96, 121 (2001)