政府備蓄米の酒造特性(No.1)~過去の研究~

独立行政法人酒類総合研究所・国税庁


加工原材料向けの政府備蓄米の放出に当たって

  1. 農林水産省第67回食料・農業・農村政策審議会食糧部会(令和7年7月30日開催)において、加工原材料向け政府備蓄米の販売について発表がありました。
  2. この発表を受け、酒類総研では、売渡し対象となる令和2年産政府備蓄米を用いて清酒の試験製造を実施し、今後、3回に分けて技術的な情報を発信します。
    1. No.1:過去に酒類総研で行った長期貯蔵米に関する研究
    2. No.2:政府備蓄米の精米特性・溶解性等についての試験結果の紹介
    3. No.3:試験醸造の結果を踏まえた清酒醸造の留意点等を解説

過去の研究~長期貯蔵米の酒造適性について~

長期貯蔵米と新米の食用米を比較した研究によると、以下のような結果が得られています。

備蓄米と同じ貯蔵環境(玄米、15℃以下、調湿)で5~7年間経過した食用米16サンプルについて新米と比較試験を行いました。

精米時の砕米率・無効精米歩合は高い傾向にありましたが、新米同様、玄米水分が低い(15%以下)場合は砕米率の低下が確認されました。

精米歩合70%の白米は、カリウム含量が高くなりました。また、古米臭の指標成分(ヘキサナール)は玄米では高いものの、蒸米で検出限界以下となりました。

試験醸造において掛米(精米歩合70%)に使用した場合、溶解性は新米と同程度で、発酵は旺盛でアルコールの生成が速いものがみられました。

製成酒を官能評価した結果、やや雑味の指摘はあるものの、総合得点に有意差はありませんでした

 清酒の古米酒臭として既に報告されているジメチルスルフィドを分析した結果、閾値以下でした。食用米で関心が高いヘキサナールは分析していませんが、ここにあるように香味に差が認められない結果となりました。

   なお、ジメチルスルフィドは臭化メチルが原因であるとされ、当該成分は「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」により2005年以降一部の例外を除き使用を禁止されています。

出典:奥田ら:醸協,100, 189-198,(2005)、橋爪ら:醸協,100,362-369,(2005)

連絡先 独立行政法人酒類総合研究所 info@nrib.go.jpまでお問い合わせください。

備蓄米の利用等については、所管の国税局鑑定官室にお問い合わせください。